先日発表された全国信用協同組合連合会からの、公的資金注入の申請に関する検討のニュースについては、少し驚かれた人がいらっしゃるかもしれません。
多くの人が、アベノミクスによる経済再生の効果から大手企業をはじめとして中小零細企業も含めた一連の国内事業について、業績は上向きと認識していたからです。
事実、2013年の企業倒産件数は、1万855件とバブル期にあたる1991年の1万723件とほぼ同レベルに落ち着き低水準と成ったことが、東京商工リサーチの調べによりわかったことが発表されています。
つまり、そうした事からも日本経済は、企業先行で良い状態に再生して来ているので総じてそうした企業業績と密接に関連する金融機関の経営状態も悪くないはずです。
今なぜ公的資金の注入が必要なのかと、疑問に感じる人も少なくないでしょう。
従来、金融機関が公的資金の注入を申請する際は、不良債権処理などを進めるなどネガティブな要因から来るものがほとんどでした。
しかし、今回発表された全信組連からの公的資金の申請検討は、少し様子が違うようです。
今回の公的資金申請は、一部の信用組合(釧路・東京厚生・滋賀県・中央商銀の4信組)からの公的資金注入の申請を検討する旨の発表から端を発しています。
それぞれの信組は、いずれも経営状態に支障をきたしているようなことはなく、むしろ自己資本比率も高く健全化されている信組です。
この申請検討の目的は、資本の強化を図り中小企業向け貸付の申請に積極的に対応できるように、経営基盤を強くすることが目的と言うことになっています。
それに伴い先の全信組連でも、まとまった形で公的資金を受けて自己資本の比率が高い、全国150余りの信組の資本強化への活用を呼びかけ利用を促して行く考えのようです。
昨年一年間は、中小零細企業においてもアベノミクスの効果によるところもあり、軒並み業績は上昇傾向でした。
しかし、今年から来年にかけては、段階的な消費税増税を迎えるにあたり当初予想される市場の停滞などから、中小企業の資金繰りや設備投資を目的とした中小企業向け融資の増加が見込まれます。
つまり、今回の全信組連の公的資金の注入検討は、金融機能強化法に基づく公的資金注入と言う最もリスクの少ない方法を利用して資本強化をはかり、中小企業への貸付対応強化につながります。
そして、信組に対する国の資本参加を促すことに繋がり、しいては中小企業が資金調達の面からより一層、安心して経営できる事業環境の改善へと結びついていくことでしょう。
今回のようにポジティブな姿勢による、公的資金の活用を検討している信組の方法は、中小企業経営の下支えに繋がる、成熟した日本経済ならではの優れた方法とも言えます。
公的資金の注入により、中小企業経営の活性化につながっていくことを期待しましょう。